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​大会長よりご挨拶

 2009年2月に臨床実践の現象学研究会として産声を上げ、月1回の研究会活動をベースにして、2015年8月に臨床実践の現象学会として新たなスタートを切った本学会の学術大会も、今回で第3回になります。


 今回の大会のテーマは「現象学だからできること」です。第1回大会の「現象学的研究をはじめる(再開・再会)」、第2回大会の「現象学ってなんやねん」から一歩進めて、質的研究のなかでも「現象学だからできること」に自覚的になってみよう、という趣旨が込められています。


 現象学というと「事象そのものへ!」というモットーが良く知られていますが、実は現象学の創始者フッサール自身の場合にすでにそうであったように、現象学はもともと、既存のものの見方を棚上げし、事象そのものに寄り添いつつ、その「事象そのものの方から」記述を立ち上げ、その方法も練り上げていく哲学なのです。


 ですから、臨床実践の現場でのさまざまな事象についても、既存のものの見方をそのつど棚上げして、事象の経験そのものに寄り添い、そこから記述を立ち上げていくさまざまな現象学的記述が可能であるわけですね。そうした現象学的記述を通じて、ふだんは自覚されることなく通り越されてしまっている事象の経験の成り立ちが明らかになり、事象そのものの理解が深まるのだと思います。本大会でのさまざまな分野からの一般演題発表に期待しています。


 またメイン企画のラウンドテーブルでは、国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦先生、東京工業大学の伊藤亜紗先生をお招きし、本学会主宰の西村ユミさんとともに、さまざまな角度から「身体経験の成り立ち」に迫ります。あまりに当たり前な存在である(ように一見思われる)自分の身体や、身体と世界との関わりについて、改めて見つめ直すことができれば、と考えています。


 臨床実践の記述や現象学に関心をもつ多くの方々の奮ってのご参加をお待ちしております。

2017年3月1日
大会長 榊原哲也(東京大学)

主催: 臨床実践の現象学会
共催: 科研費プロジェクト「医療現象学の新たな構築」

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